2014年3月2日 Jカフェからの交流     HOME
   

 

 著者の高田昌幸さん

 2014年3月11日  (高田昌幸さんの フェースブックより転載)
 
記者にとって一番大事なことは何か」。若い記者や学生さんから時々、そう聞かれる。答えは決まっている。先日、早稲田大学で「ジャーナリズム・カフェ」という催しがあり、そこでも同じ話をしてきた。


答えは何か?

圧倒的な知識量、である。圧倒的な勉強、である

ひと昔前、新聞社は体育会のようであり、軍隊のようであり、だった。警察担当記者に象徴的に残る風習がまさにそれだった。しかし、そんな時代はとうに終わっている。新聞社の組織内にはそれが残っていたとしても、そんなものはとうに時代の垢になってしまっている。

何のための、圧倒的な知識量、か。
...
簡単である。相手に騙されないため、だ。

相手の虚言や虚飾を見破り、きちんとした質問を繰り出すためだ。取材はすべて質問から始まる。報道は質問から始まる。ならば、その質問力を鍛えるのは当然であり、質問者もしっかりと可能な限り、レベルを高めていかねばならない。自明の理だ。

記者は過去、さんざん騙されてきた。一緒になって騙しもした。満州事変、日中戦争、太平洋戦争。3・11とそれに伴う原発事故もまたしかり、である。

情報の受け手をもう2度と騙してはいけない。
1945年夏のあと、われわれの先輩たちは(全員ではないにしても)そう思ったはずである。そう、2度と騙してはいけないのだ。騙さないためには、記者がまず、騙されてはいけない。だから、その第一歩として「圧倒的な知識」「勉強勉強、また勉強だ」と私は言っている。

報道で騙してはいけない。そのために騙されてはいけない。
騙さないこと、騙されないこと。



タイムラインのこの投稿に対して「どこまで勉強すれば?」「全方位型の記者が必要なん? 専門記者の時代でしょ?」といった反応を早速、いただきました。どこまで何を、に正解はありません。
 
専門記者でしょ?も、そうかもしれません。 ただ、端的に言えば、バランスシートや有価証券報告書くらいきちんと読めないと、経済取材はできないでしょうし、裏金問題を取材するなら公会計の仕組みから個々の出納実務までは最低でも知っておかないと、取材になりません。JR の担当になったら、ぜひ電車の運転席に入れてもらって、どのスイッチが何
かを教われば良いと思います(私はそうやったことがあります)。あるいは、刑訴法や警職法、捜査規範などを勉強してないと、違法捜査に関する取材もままならぬ、です。

少なくとも、取材相手の日常の仕事は何なのか、と。どういう仕組み、法令の上で動いているのか、と。そうした知識は必須だと思います。そして、それにプラスして、少なくとも1920年代くらいから後の日本史と世界史の知識でしょうか。   知識、知識ばかり言ってあれですが、かなり根源的なことだと思います