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   Wasedocu1「沖縄戦70年 テレビは何を伝えたか」開催レポート

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2015年6月24日開催
Wasedocu1「沖縄戦70年 テレビは何を伝えたか」開催レポート
 
早稲田大学ジャーナリズム研究所の設立プレイベント「沖縄戦70年 テレビは何を伝えたか」が6月24日、早大で開かれた。学生やドキュメンタリーに関係する映画監督やプロデューサ、テレビ局関係者、ジャーナリストら100人が来場。ドキュメンタリーの上映と制作者のトークライブを通じ、沖縄がなめてきた辛酸に思いを巡らせた。
 
ジャーナリズム研究所は花田達朗・早大教授を所長に、ジャーナリストたちの横の連携を育む場を目指し発足した。上映会はその一環で、新たに拠点をジャーナリズム研究所に置いた「JapanDocs(Japan Documentary Archive)」が協力し、Wドキュメンタリーカフェ(略称WaseDocu)の第1回として開催された。
 
この日上映されたのは「沖縄の勲章」(1969/NHK/ディレクター平尾浩一)と、「ひめゆり戦史―いま問う国家と教育」(1979/NTV/ディレクター森口豁)の2本。「沖縄の勲章」は本土復帰前の作品で、沖縄の人が戦闘に協力した功績による勲章を受ける葛藤を映した。「ひめゆり戦史」は、傷病兵の看護を命じられ211人が犠牲になった「ひめゆり学徒隊」の34年後から沖縄戦をひもといた。女生徒の命を守ることより自らの保身に走り戦後は安穏と暮らす当時の校長や軍人をディレクターの森口氏が直撃する。
 
上映後は「ひめゆり戦史」の森口氏と、NHK放送文化研究所上級研究員の七沢潔氏のトークライブがあった。
森口氏は沖縄の取材に20歳過ぎから没頭してきた。日本テレビの放送局長に「君は沖縄の番組ばかりつくるが本土も大変だったんだぞ」と諭されたことを明かし、「沖縄戦は軍の銃口が住民に向けられるという戦争の本質が現れている点が、本土とは違う」と語った。
七沢氏は2作品について「国のために戦ったことを美化する映画「ひめゆりの塔」など本土から持ち込まれる戦争物語へのカウンターだ」と評した。
 

次回Wasedocu2は、2015年8月8日(土)ポレポレ東中野で劇場公開される「天皇と軍隊」(2009/制作フランス/監督渡辺謙一)の先行試写会が2015年7月29日(水)に、また第3回は、2015年放送文化基金賞ドキュメンタリー部門最優秀賞とディレクターの石原大史氏が演出賞を受賞した、ETV特集「薬禍の歳月−サリドマイド事件50年」を10月1日(水)に開催を予定している。


第1回 「沖縄戦70年 テレビは何を伝えたか」

○日 時:2015年6月24日(水)18時30分から21時(開場18時15分)
○場 所:早稲田大学14号館5階501教室
○参加費無料(事前申し込み不要)どなたでも参加できます

●テレビドキュメンタリー作品の上映とトーク
特集ドキュメンタリー『沖縄の勲章』(1969年/NHK/D平尾浩一/59分)
NNNドキュメント『ひめゆり戦史?いま問う国家と教育』(1979年/NTV/D森口豁/49分)
■トークゲスト
 森口豁(沖縄を語る一人の会、ジャーナリスト)
 七沢潔(放送文化研究所上級研究員)

■上映作品 
特集ドキュメンタリー『沖縄の勲章』(1969年/NHK/ディレクター平尾浩一/59分)
本土復帰以前、最も早く沖縄戦を描いたテレビ作品。沖縄戦の犠牲者に日本政府が勲章を授与するための準備として、琉球政府援護課が行なった聞き取り調査に同行取材、日本兵に退避していた壕を追い出された家族、一家全滅した家族など、戦争の生々しい傷跡が浮かび上がる。地上戦に住民が巻き込まれた沖縄では、戦死した住民に「一般戦闘協力者」として例外的に勲章が与えられた。しかしラストシーン、炎天下の村の集会所で勲章の授与をまつ遺族の顔には、複雑な表情が……。

NNNドキュメント'79『ひめゆり戦史?いま問う国家と教育』(1979年/NTV/ディレクター森口豁/49分)
沖縄戦で傷病兵の看護を命じられ、211名もの女生徒が戦死した「ひめゆり学徒隊」。その生存者たちが、戦後34年たって行なわれた「卒業式」を契機にはじめて証言した。それは、友人たちの惨たらしい死や日本兵の醜さを伝えるリアルな戦場の姿だった。「わずか15歳から20歳に満たない幼い少女たちがなぜ戦争に駆り立てられていったのか。いったい何が、誰が彼女たちを戦場に引き込んでいったのか」制作者は教師や大人たちの責任を追及してゆく。

■トークゲスト紹介 
森口豁(もりぐち・かつ)
1937年東京都生まれ。玉川大学文学部中退。1959年、22歳で米軍統治下の沖縄に渡り、琉球新報社会部記者、日本テレビ沖縄特派員、同テレビ報道ドキュメンタリーのディレクターなどを経てフリーのジャーナリストに。主なテレビ作品にノンフィクション劇場「乾いた沖縄」、同「沖縄の十八歳」、NNNドキュメント「一幕一場?沖縄人類館」、同「島分け?沖縄鳩間島哀史」ほか、沖縄をテーマに30本近くのドキュメンタリー作品を制作。著書に『復帰願望?昭和の中のオキナワ・森口豁ドキュメンタリー作品集』(海風社)、『だれも沖縄を知らない?27の島の物語』(筑摩書房)。共著に『シリーズ 日本のドキュメンタリー・第3巻 生活・文化編』(岩波書店)など。

七沢潔(ななさわ・きよし)
1957年静岡県生まれ。1981年早稲田大学政冶経済学部卒業、ディレクターとしてNHK入局。沖縄や原発、イスラム世界をテーマに多数のドキュメンタリー作品を制作。2004年に放送文化研究所へ異動、現在上級研究員。主な作品にNHK特集「放射能食糧汚染?チェルノブイリ・2年目の秋」、ドキュメンタリー’90「軍用地返還というけれど?米軍新戦略に揺れる沖縄」、NHKスペシャル「シリーズ イスラム潮流」、ETVスペシャル「貘さんを知っていますか??詩人・山之口貘の軌跡」、ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図?福島原発事故から2か月」(文化庁芸術祭大賞など)。論文に「記録された沖縄の“本土復帰”」(『放送メディア研究』2011)、著書に『原発事故を問う?チェルノブイリから、もんじゅへ』(岩波新書)、共著に『ホットスポット?ネットワークでつくる放射能汚染地図』(講談社)など。