早稲田大学
ジャーナリズム研究所

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   W ドキュメンタリーカフェ(Wasedocu2) レポート 003

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2015年10月1日(木)開催
   Wasedocu3 終わらない薬害を考える レポート

   ETV特集『薬禍と歳月 サリドマイド事件・50年』上映とトーク
 
第3回のWasedocu(Wドキュメンタリーカフェ)が10月1日、早稲田大の小野記念講堂で開かれた。上映作品は、サリドマイド薬害で子どもの時から重い障害を負った人たちの生き様を撮ったETV特集『薬禍と歳月 サリドマイド事件・50年』。作中に出てくる被害者自身が学生やドキュメンタリー制作者、薬剤師ら80人と共に視聴し、上映後はトークライブに登壇した。早稲田ジャーナリズム研究所主催、ジャパンドックス協力。

  

サリドマイドは睡眠薬として西ドイツでは1957年、日本では1958年から販売された。妊婦が服用し生まれた子どもが手足や心臓に重い障害を負った。日本での被害者は300人を超える。作品では50歳を超えた被害者たちの、これまでの人生に迫った。
生まれてすぐ親に捨てられた男性は「何で全部オレが背負うのか、いつか親をこてんぱんにしてやる」と恨みつつ、「世の中にはもっと苦しい人がいる。自分の人生を受け入れよう」と葛藤してきた。「地獄ですよ」と語る。母になった被害者は「私も子どもを障害児にするのではないかと怖くなった」と出産体験を思い出す。

しかも被害は過去のものではない。被害者たちは年齢と共に新たな症状が出る二次被害に苦しんでいる。仕事でキャリアを積んできた女性は、全身の痛みから退職した。

心のひだを一枚一枚めくるような映像と言葉の数々がなぜ撮れたのか。上映後はNHKの石原大史(ひろ・し)ディレクターと、被害者で作品に登場する増山ゆかりさんが語り合った。

石原さんは1978年生まれで、薬害のことは作品を撮り始めるまではよく知らない。被害者たちと向き合う中で「ある一点を超えようとすると答えようとされない。それでも続ければ『暴力』ではないか、もうやめようかと思った。しかし、被害者はそんな私たちの思いを察するように、語ってくれた」と吐露した。

一方の増山さんは、石原さんを「まっさらな目や耳で感じ取ることができる」と感じた。何よりも石原さんや、マイクを持ちながら涙ぐむ音声担当者ら制作スタッフと「人として寄り添えた」という。当初、取材を受けることに「色気」もあった。しかしそれは取材を受ける側の「覚悟」として自覚するようになったと語った。

取材する側と受ける側の「覚悟」が、この作品の価値を高めているのであろう。

会場からも声があがった。
薬剤師の女性は「販売禁止になった薬を薬局で置き続けて被害が広がった。薬剤師の責任は重い。この作品を薬剤師全員がみるべきだ」と訴えた。45年前にあったサリドマイド薬害の裁判を取材した元NHK記者の男性は「法廷に立った被害者のお父さんは、我が子はトイレに一人で行けないだろう、そばにいてやりたいと仕事を辞めて小学校の用務員として働いていた。左右をみると法廷の記者は全員が泣いていた」と振り返った。

   

第4回のWasedocuは2016年新春に劇場公開される「ヤクザと憲法」(東海テレビ)の先行試写会。11月15日(日)14時から早大小野記念講堂で上映される。詳細はホームページ、FB、ジャパンドックスのメールニュースで案内予定。



 チラシ